バックテスト基礎
勝率90%のEAほど「危ない」理由と、隠れたリスクの見つけ方
公開 2026.06.15最終確認 2026.06.15
勝率が高いEAは安全に見えるが、実は「コツコツドカン」のリスクを隠し持っていることが多い。勝率だけでなく、平均損失、リスクリワード比、ナンピンの有無からEAの本当の危険性を測る方法を整理する。
EAを探しているとき、販売ページや紹介文で一番目を引く数字。
「勝率90%オーバー!」
これを見ると「10回やって9回勝つなら、どうやっても負けないだろう」と錯覚してしまう。
初心者の頃の私もそう思い、高勝率を謳うEAをリアル口座で稼働させた。
最初の1ヶ月は毎日数千円の利益が積み上がり、カレンダーは青い(プラスの)数字で埋め尽くされた。「これは本当にすごいEAを見つけた」と有頂天になった。
しかしある日、相場が急変した。
EAはいつまで経っても損切りをせず、含み損がどんどん膨らんでいく。そして最終的に「強制ロスカット」で口座資金の全てが吹き飛んだ。
1ヶ月の利益を、たった1回の負けで全て失うどころか、元本まで溶かした。
これが「高勝率EA」に隠された、最も残酷な罠だ。
「損切りしない」から勝率が高いだけ
勝率を90%に上げる一番簡単な方法は何か。
「含み損になっても、建値に戻るまで必ずに損切りしないこと」だ。
相場は波打って動くため、一時的に逆行しても、ずっと耐えていればいつかはプラスに戻ることが多い。そこで数pipsの利益でサッと利確する。
これを繰り返せば、表面上の勝率は簡単に90%や95%になる。
しかし、相場には「二度と戻ってこないトレンド(大暴落・大暴騰)」が必ずある。
損切り幅を異様に広く設定しているか、あるいは損切り自体を設定していないEAは、この「一度の逆行」で口座を破綻させる。
「小さく何度も勝って、一度に全てを失う(コツコツドカン)」
高勝率EAの正体は、これであることが非常に多い。
ナンピン・マーチンゲールの存在
もう一つ、勝率を極端に押し上げる仕組みが「ナンピン(ポジションの追加)」や「マーチンゲール(倍掛け)」だ。
逆行するたびにポジションを追加し、平均取得単価を下げる。少しでも反発すればトータルでプラスになるため、勝率(一連のトレードセットとしての勝率)は高くなる。
ナンピン系EAは「機能している間は」非常に気持ちよく利益が増える。
しかし、トレンドが一方向に続いた時の含み損の増え方は雪だるま式だ。これも「一度の負けで全てを失う」典型的なパターンである。
勝率とセットで見るべき「リスクリワード比」
EAの安全性を測るには、勝率だけを見てはいけない。
必ず「平均利益」と「平均損失」をセットで見る。
- 平均利益:1回の勝ちで得られる平均額(またはpips)
- 平均損失:1回の負けで失う平均額(またはpips)
たとえば「勝率90%、平均利益1,000円、平均損失20,000円」のEAがあったとする。
9回勝って9,000円儲かるが、1回負けると20,000円失う。トータルでは11,000円の赤字だ。
これが「期待値がマイナス」の状態だ。
勝率がどれだけ高くても、リスクリワード(平均利益と平均損失のバランス)が破綻していれば、長く回すほど確実にお金は減っていく。
この記事のメモ
「勝率が高い=優秀なEA」という思い込みは、早めに捨てたほうがいい。
むしろ、EA開発や検証に慣れてくると「勝率90%」と聞いただけで「ああ、損切りを広く取ってるか、ナンピンしてるな。一度の被弾で大きく崩れるタイプだ」と警戒するようになる。
私が長期的に信頼して回しているEAの多くは、勝率50%〜60%程度だ。時には40%台のものもある。
でも、負ける時は浅く損切りし、勝つ時はトレンドに乗って大きく利を伸ばす(損小利大)。だからトータルでお金が残る。
「カレンダーが毎日プラス」である必要はない。
月トータル、年トータルで残高が増えているか。それがEA運用の本質だ。
チェックリスト
- [ ] 「勝率」だけでなく、「平均利益」と「平均損失」の金額を確認したか
- [ ] 1回の最大損失額(Max Loss Trade)が、口座資金の何%を占めているか確認したか
- [ ] バックテストのグラフに「含み損(緑色のグラフの下落)」が極端に深く出ていないか
- [ ] ナンピンやマーチンゲールのロジックが組み込まれていないか(入っているなら、最悪のシナリオの損失額を計算しているか)
- [ ] 「勝率 × 平均利益」が「敗率 × 平均損失」を上回っているか(期待値がプラスか)
FAQ
Q: 勝率が低いEAだと、連敗が続いてメンタルが持ちません…
その気持ちはよくわかります。勝率40%だと、確率的に7〜8連敗することも普通にあります。それに耐えるには、「損切り1回あたりの損失額(ロットサイズ)」を極力小さく設定し、資金管理でメンタルを守るしかありません。
Q: ナンピンEAは全て危険(悪)ですか?
「全て悪」とは言い切れません。レンジ相場に限定して稼働させたり、最大ポジション数(ナンピン回数)を厳密に制限して、最悪でも口座の30%の損失で強制カットするような「安全装置」があれば、ポートフォリオの一部として機能させることは可能です。問題なのは「無限にナンピンして最後は飛ぶ」設計のものです。
免責
本記事は個人の検証メモであり、投資助言ではありません。高勝率であっても相場の急変によるロスカットリスクは常に存在します。